レセプト業務とは?難しい?資格いる?未経験者向けに流れとコツを解説!
目次
レセプト業務とは、保険事業を行う保険者から医療費を請求するために必要ことで、医療事務業務の中でとても重要な業務です。
聞き慣れない単語かもしれませんが、医療事務に携わっている方、これから医療事務を目指そうと思っている方は、聞いたことがあるのではないでしょうか。
「レセプトってなんだろう?」
「レセプト業務って実際どんなことするのだろう?」
「レセプト業務に資格は必要なのかな?」
など、レセプトやレセプト業務について知りたい方のために、今回は、医療事務歴4年レセプト業務に携わった主婦ライターのわたしが
- 実際のレセプト業務の流れ
- レセプト業務で大変だったこと
- 実際にあった返戻
など、実際の医療事務経験を基に解説していきます。
また、レセプト業務経験者30人にもアンケートを実施し、調査結果を基に「レセプト業務の大変さ」や「レセプト知識を問われる資格」なども紹介していきます。
レセプト業務に興味がある方は、ぜひ参考にしてくださいね。
内容:医療事務のレセプト業務をした経験がある人アンケート
対象:レセプト業務経験者30名
募集期間:2022年5月25日~5月27日
調査方法:インターネット調査
静岡県在住の30代主婦
医療事務の専門学校在学中に4つの医療事務資格を取得し、新卒で病院に就職。
4年間病院勤務の医療事務としてレセプト業務や健診業務、救急車の受け入れや、急患の対応などを経験。
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そもそもレセプトとは?
レセプトとは、診療報酬明細書のことをさします。いわゆる医療費の領収書(レシート)です。
レセプトには、主に次の情報が入力されており、レセプトを見ればどんな診療を受けたのか、どんな薬が処方されたのかなど、診療内容がわかるようになっています。
- 受信した医療機関名
- 保険者番号
- 実施した検査
- 実施した処置
- 使用した薬剤
- 処方薬
- 請求点数など
保険医療機関で受診経験のある方は、お会計の際に下記の画像のような領収書と診療明細書を受け取ったことがあると思います。レセプトの内容もそれとほぼ同じです。
現在、日本は国民皆保険制度により、保険加入者は最大で医療費の3割を負担し、残りの7割は、加入している健康保険組合などを運営する保険者が負担する仕組みとなっています。
レセプト業務とは、健康保険組合や協会けんぽなど保健事業を行っている保険者に、保険者負担分の医療費を請求する業務のことをいいます。
医療機関は、毎月保険者ごとにレセプトをまとめて提出し、受理してもらわないと保険者側からの医療費を受け取ることができないため、レセプト業務は医療機関の経営に欠かせない業務なのです。
※参考:「日本の国民皆保険制度について」,厚生労働省,(閲覧日:2022/06/10)
レセプト業務は難しい?実際の流れを解説
ここからは、わたしが病院の外来に勤務していた頃の、実際のレセプト業務の流れについて紹介します。主な流れは次のとおりです。
レセプト業務の流れ
- レセプト印刷
- レセプト点検
- 審査支払機関に提出・返戻を修正
では、詳しく解説していきます。
レセプト印刷
レセプト請求は1ヶ月分のレセプトを翌月10日までに提出する必要があります。
そのため、レセプト業務は月末の最終診察が終わったタイミングから翌月の月初にかけて業務が行われます。
月末の外来診察最終日、わたしが勤めていた病院では17時過ぎからレセプトの印刷を始めていました。
レセプトは、患者さんが受診した際に医事コンピュータに会計入力をしており、そのデータから自動的にレセプトとして作成されているので、月末の時点で新たに入力することはありません。
印刷自体はあまり大変な作業はありませんが、わたしが勤めていた病院は患者さんが多かった分、すべて印刷し終わるまでに3時間程はかかりました。量が多いので、プリンターに印刷用紙を何回も補充しなければならないのもなかなか手間がかかります。
また、月末最終日の深夜24時までに救急で診察した患者さんはその月に含まれるので、その分のレセプトは翌日以降に追加で印刷します。
レセプト点検
翌月1日から、印刷した大量のレセプトを1枚ずつ点検していきます。
わたしの勤めていた病院では職員が2人、通常業務から外れてレセプト担当となります。
レセプト点検で見るポイント
- 保険者番号
- 病名
- 検査内容
- 処方薬
- 加算項目
- コメントが必要な項目
不備があるレセプトは事務室に持っていき、カルテと照合します。
医師のコメントや確認が必要なものは、医師に渡し指示を仰ぎます。医師は忙しいので、医局のデスクに置いても放置されてしまう場合があります。医師によっては院内を探して、その場で記入してもらっていました。
審査支払機関に提出・返戻を修正
レセプトを、審査支払機関に提出します。
もし、レセプトの内容に不備があり受理されなかったものは、返戻として戻ってきます。わたしの病院では毎月約7,000枚のレセプトの中から10枚ほどの返戻がありました。返戻されたレセプトは修正し、月遅れ請求として再度提出する必要があります。
この場合、本来受理されるはずだった月より遅れてしまうので、保険者から病院に支払われるはずの医療費請求が遅れてしまいます。
返戻の件数が多いと、病院の経営に影響が出る可能性もあるので、その月に確実に受理してもらえるようにレセプト1枚1枚細かく確実にチェックしていかなければなりません。
記事の後半では、実際にわたしの勤務していた病院であった「返戻の例や気をつけるべきポイント」も紹介していますので、そちらもぜひご覧ください。
レセプト業務以外の医療事務の仕事についてもっと知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
医療事務とはどんな仕事?医療事務歴4年の主婦が1日の流れや資格を徹底解説
医療事務経験者が解説!レセプト業務で苦労すること
この章では、医療事務を4年経験したわたしが「レセプト業務で大変だと感じたこと・苦労したこと」を解説していきます。
実際に、レセプト業務経験のある医療事務員30人にもアンケート調査を行いましたが、レセプト業務の大変なことについての意見は、わたしがレセプト業務に感じていたことと、似た意見が集まりました。
レセプト業務の大変だったこと・苦労したこと
病院・クリニックなど各医療機関のやり方や規模に関わらず、レセプト業務自体の大変さはどこも同じなのだということがわかります。
アンケートで集まった実際のリアルなコメントも合わせて紹介します。
一枚ずつ細かくチェック
わたしの勤めていた病院は患者さんが多かったため、レセプトを1枚ずつ点検をすることがとにかく大変でした。
合計7000枚程のレセプトを、毎日8時間フルに使って点検するので後半はげっそり…。また、眠気との戦いでもありました。
わたしの病院は4~5人体制で行っていましたが、クリニックは医療事務スタッフが少ないので通常業務との両立が大変なようです。
毎月月末~翌月5日は残業・休日出勤・休めない
レセプト期間は基本的に休めません。翌月5日くらいまでは毎日3時間くらい残業します。普段、土曜日の勤務は午前中で終わりなのですが、昼食を持参し18時くらいまで残業していました。
また、G.W.(ゴールデンウィーク)や月初に祝日が重なった場合は休日出勤です。もちろん休日出勤した分は、代休を取ることができますが、取れる日が限られてしまうので他の職員と争奪戦になっていました。
レセプト業務期間は医療事務ではない友人と予定を合わせることは不可能でした。
未経験だとレセプトを見てすぐ間違いに気付けない
保険証番号の桁数が足りない、などの間違いはパッと見で気付くことができますが、それ以外の内容は知識がないと難しいと感じました。
- 算定ルールに合った点数がついているか
- 検査に必要な病名がついているか
- 入力ミスはないか
など、確認する項目がたくさんあります。
保険点数表を見ることはできますが、レセプト1枚ずつ点数表で適切な点数がついているかどうか調べていたらきりがないので、覚えるしかありません。わたしの病院では、レセプト期間のみ来てくれる職員さんが2人いたので、教わったことは全部メモしていました。
【実体験】レセプトの返戻例と気を付けるべきポイント
ここでは実際に、わたしが勤務していた病院であったレセプトの返戻例を踏まえて、返戻を防ぐために日常業務で気を付けていたことを紹介していきます。
レセプト返戻を防止するために気をつけるポイント
それぞれ詳しく解説していきます。
保険証番号の指差し確認
保険証番号の単純な入力ミスは、新規の患者さん登録時に、意外とあります。
入力後、別の職員に確認してもらうのが理想ですが、忙しいとなかなかできません。わたしの職場では指さし確認を徹底していました。
保険証は毎月確認、変更点はスタッフ同士で共有
転職等で保険証が変わっているのに情報が変更されていないケースもよくあります。
そのため、定期的に通院している患者さんでも毎月確実に確認することが大切です。また、後期高齢者受給者証なども合わせて確認します。
月の途中で国民健康保険から社会保険に変更、またはその逆の場合、レセプトも変更になった分2枚必要です。国民健康保険で1枚、社会保険で1枚で、提出先が異なります。
患者さんの保険証情報を上書きしてしまうと確認ができなくなってしまうので、上書きせずに新たに登録し、レセプトを2枚出すことをノートに記入し職員で共有していました。
診察日に病名をつけてもらう
薬が処方された日や検査をした日には、それに対応する病名が必要です。当然のことですが、病名は医療事務員が勝手に付けることはできません。
レセプト点検の際に都度、医師に確認しにいく手間をなくすためにも、会計後、その日のうちにカルテを医師に渡し、病名を付けてもらうことを徹底していました。
薬を処方するには、その薬に対する病名が必要です。「骨折」で「風邪薬」を処方することはできませんよね。薬が処方された日に、それに対応した病名を医師に記入してもらい、入力していました。
急性の病名を残さない
病名には開始日も入力します。
「急性」と付く病名が何ヵ月も治癒せずレセプトに残ったままだと返戻対象になってしまいます。診療が続いている場合は、「慢性」に変更する必要があります。
気付いた時点で医師に確認をしておき、返戻を防ぐようにしていました。
医療事務員80人に聞く!「医療事務の資格」持ってる?
レセプト処理能力を証明する資格を紹介しましたが、実際は、レセプト業務は未経験でも資格がなくても行うことができます。
では実際、病院やクリニックでレセプト業務に関わっている方は、レセプト業務に関する資格を保有しているのでしょうか?
今回取ったレセプト業務経験者30人のアンケートとは別に、医療事務経験者80人にアンケート調査を行い、医療事務資格の有無を聞いてみたので、その結果を紹介します。
・調査内容:医療事務の実務・資格に関するアンケート調査
・調査対象:元・現役医療事務経験者80人
・調査方法:インターネット調査
・調査機関:2022年4月20日~4月26日
【質問内容】
・年齢
・性別
・医療事務としての年収
・勤務先
・医療事務系の保有資格の有無
・医療事務のやりがい
・医療事務の大変なこと
・医療事務をする上で資格は持っておいた方が良い?
・上記の理由
・医療事務に向いている人
医療事務スタッフの資格保有率は43.8%
アンケートの結果、医療事務経験者80人の内、医療事務関連の資格を持っている人は43.8%でした。若干、資格を持っていない人の方が多くなりました。
わたしが勤務していた病院では医療事務員全員が資格保有者だったため、資格を持っていない人の方が多いという結果に少し驚きました。
医療事務の資格はたくさんありますが、学科試験でレセプト知識が問われるものや、実技試験でレセプト作成を求められる資格などもあり、レセプト処理の知識は、医療事務の資格を取る上では必須といえます。
頻繁に発生する業務ではありませんが、記事の冒頭でもお伝えしたようにレセプト業務は、医療事務の仕事の中でも重要な業務です。また、病院やクリニックによって検査内容や処方薬が異なるので、レセプト点検の難易度も変わってくるでしょう。
そのため、未経験から医療事務を目指している人や、どこにいっても通用するレセプト業務の基礎知識を身につけたい人は、資格を取っておくことをおすすめします。
資格保有率以外にも「持っている資格ランキング」や、「医療事務の資格って実際必要?」といったアンケート調査も実施しています。気になる結果はこちらの記事の後半で紹介していますのでぜひ参考にしてくださいね。
医療事務とはどんな仕事?医療事務歴4年の主婦が1日の流れや資格を徹底解説
レセプト業務に役立つ医療事務の資格は?
前章でもお伝えした通り、医療事務の資格はたくさんありますが、実際にレセプト処理能力を証明する資格は次のようなものがあげられます。
レセプト処理能力が証明できる資格例
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
- 医療事務管理士技能認定試験
- レセプト点検業務技能検定試験
実際にわたしも画像で紹介した通り、「1,診療報酬請求事務能力認定試験」と「3,医療事務管理士技能認定試験」の資格を保有しています。
特に診療報酬請求事務能力認定試験は、実技試験の中に、実際にレセプトを作成する試験内容が含まれており、医療事務関連の資格の中では最もも難易度が高いと言われています。持っておくと就職・転職に有利な資格と言えます。
【診療報酬請求事務能力認定試験の試験概要】
受験資格 | なし |
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合格率 | 38.4% |
受験科目 | 学科試験(計20問/マークシート) 実技試験(計2問/レセプト作成:外来・入院各1問ずつ) |
試験時間 | 180分 |
合格基準 | 学科試験:70点以上 実技試験:85点以上 |
受験料 | 9,000円(税込) |
試験日 | 年2回(7月、12月)、日曜または祝日 |
試験はレセプト問題から解くのがおすすめ!
実際にわたしは診療報酬請求事務能力認定試験を受験した際、マークシート方式の学科を後回しにし、レセプト作成から取り掛かるようにしました。
カルテから診療情報を読み取り、手書きで作成するのは時間がかかります。時間配分を決めつつ、レセプト作成から取り掛かると焦らずにできるでしょう。
医療事務の資格を取るために通信講座を検討している人は、こちらの通信講座がおすすめです。
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今回、最も難易度の高い、診療報酬請求事務能力認定試験の資格に注目して紹介しましたが、もっと難易度の低い資格から始めたい、他の医療事務資格も詳しく知りたいという人は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
医療事務の資格はどれがいい?種類や難易度、おすすめの取り方を紹介
まとめ
実際のレセプト業務について紹介しましたが、いかがでしたか?
慣れるまでは難しく感じるかもしれないレセプト業務ですが、病院の経営に関わる重要な業務なのでとてもやりがいがあります。
レセプト業務未経験の人は知識を身につけるために、既にレセプト業務に携わっている人は知識の深掘りの為に、資格を取ってみるのもおすすめですよ。
「選ぶをもっと楽しく」をコンセプトに、専門家・愛好家・体験者の方にご協力頂きながら、買い物やサービス選びに悩む方たちをサポートします。一人ひとりにフィットした情報に届け、皆さんの「したい」を叶えます。
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